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AI活用

「AIで何でも作れる時代」なのに、なぜ勝てる人は減っているのか

誰でも秒で作れるようになった。だからこそ、AIファーストの人から静かに脱落していく。

2026年7月6日伊藤翔太10分で読める
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「AIで何でも作れる時代」なのに、なぜ勝てる人は減っているのか

最近、いろいろな経営者やAIを触り始めた方とお話しするたびに、同じ矛盾にぶつかります。

「AIでできることは、この1年で爆発的に増えた。なのに、AIで実際に勝てている人は、むしろ減っている」

はじめは私の思い込みかと思いました。でも、話せば話すほど、これは気のせいではないと確信するようになりました。ツールはこれ以上ないほど強力になったのに、成果が出ている人の割合は下がっている。今日はこの、ちょっと理不尽な話をさせてください。


先に、私の立ち位置を書いておきます。

私は2025年の9月から、LovableでAIを使った開発を本格的に始めました。今(2026年7月)は、そこにClaude Codeも主力として加わり、いくつもの業務システムやプロダクトを、ほぼ一人で作り続けています。書いたコードの行数は、正直もう数えていません。おそらく何千万行という単位にはなっているはずですが、行数そのものは、もうたいして重要ではなくなりました。Lovableでは、国内トップ1%の利用者という認定(Lovable社による認定・2025年)もいただいています。ひとことで言えば私は、この1〜2年、AIで"作る"ことを誰よりも突き詰めてきた側の人間です。

同時に私は、AIが無かった時代に、外部のシステム開発会社に発注して、約3,000万円かけて「使えないもの」を作った当事者でもあります。要件定義に3ヶ月、開発に半年、出来上がったものは現場で使われず、結局Excelに戻りました。「作れなかった側」の痛みも、身をもって知っているつもりです。

この両方を経験したからこそ、今回の「作れるのに勝てない」という矛盾の正体が、わりとはっきり見えています。

「作れること」の値段は、ゼロに近づいている

まず、事実から確認させてください。

かつては特別なスキルだったものが、みんなのものになった瞬間に、そのスキルの値段はゼロに溶けます。これはAIに限った話ではありません。

  • スマートフォンを使えること
  • Excelで表計算ができること
  • ブラインドタッチができること

どれも、ひと昔前は「できる人」と「できない人」を分ける立派なスキルでした。苦労して身につけた人が報われる世界だった。でも、全員ができるようになった瞬間、それは差にならなくなりました。

いま、まったく同じことが「AIでものを作れること」に起きています。

画像生成も、動画生成も、プロンプトの工夫も、ちょっとしたアプリを作ることも、言葉さえ書ければ誰でもそこそこの品質でできるようになりました。あなたが頑張ってアプリを作っても、次の日には誰かが秒で似たものを作れる。私は27年近くこの業界の周辺にいますが、これは本当に怖い変化だと痛感しています。

つまり——AIと技術だけで作ったものは、猛烈なスピードでコモディティ化(ありふれたもの化)して、値崩れしていく。作ってはコピーされ、また作ってはコピーされ、の連続です。

スマホ操作・Excel・ブラインドタッチがかつてスキルだったのと同じように、「AIで作れること」もコモディティ化してゼロに溶けていく様子を示した図解 ▲ かつてスキルだったものは、全員ができるようになった瞬間に値段がゼロに溶ける。「AIで作れること」も同じ道をたどっている。

だから、AIファーストの人から負けていく

ここで、多くの人がハマっている落とし穴の話をします。

いまAIビジネスがうまくいかない人の最大の共通点は、「AIファースト」になっていることです。

どういうことか。AIというすごい能力が先にあって、そこに後から「さて、これで何のビジネスをしようか」とくっつけようとしている。順番が逆なんです。

ビジネスの原理原則は、昔からずっと変わっていません。

困っている人の問題を、他の誰もできない形で解決した人が、その市場の一番になる。そして満足させ続けた人に、リピーターと売上がついてくる。

これだけです。AIはこの原則の外にある魔法ではありません。AIは、あくまで「解決のやり方」「手段」でしかない。 お客さんの満足、お客さんからの感謝、お客さんが喜ぶ瞬間——そこを先に設計して、その解決手段としてAIを使う。この順番の人が、結局いちばん強い。

私はこれを「ビジネスファースト・AIセカンド」と呼んでいます。人間のスキルという土台の上に、AIを載せる。逆にすると、土台のないところにいくら高性能なAIを載せても、ぐらついて倒れます。

思い返せば、私が3,000万円を溶かした外注の失敗も、構造は同じでした。あのとき、発注側の私も、受注した開発会社も、いつのまにか「システムを完成させること」がゴールになっていた。「現場が本当に使えるか」というビジネスの一番大事な問いが、後回しになっていたんです。「作ること」をゴールにした瞬間に負ける——この構造は、AIが登場する前から存在していました。AIは、それを何十倍速にしただけです。

では、価値はどこへ移ったのか

「作れること」がゼロに近づいたなら、価値はどこかへ移動したはずです。私は、2つの場所に移ったと感じています。

1つ目は、「何を、誰のために作るのか」を決める部分。

これは元々あった、いちばん大事な工程です。でも、AIがあまりに簡単に作れるようになったせいで、逆にこの工程がスカスカになってしまった。作ることが簡単すぎて、「何を作るべきか」を考える前に手が動いてしまうんです。ここを深く握れているかどうかが、そのまま差になります。

2つ目は、それを届ける人間力・スキル。

たとえばLovableやClaude Codeでアプリを作るとします。画面のデザインも、操作の見た目も、大体の仕様も、真似しようと思えば真似できる。じゃあ、どこで価値が変わるのか。使う人の課題をどこまで深く理解しているか、そして作った後にどれだけ粘り強く運用・改善し続けられるか——ここです。ここだけは、コピーできません。

私が業務システムを作るとき、本当に効いているのは「登録画面を何百枚も書ける」ことではありません。「この会社の、この業務の、この人が、ここで詰まる」を理解した上で、正しい設計判断を何百回も積み重ねること。ここは、AIには丸投げできない。人間の仕事として残り続けます。

この「作れることは武器にならない/設計判断と運用こそが価値」という話は、自分が作った基幹システムをAI3社に見積もらせたら全部「2〜3億円」だった話にも、別の角度から書きました。よかったら合わせて読んでみてください。

AIの本当の価値は「スピード」——ただし、正しい順番のときだけ

こう書くと、「じゃあAIって、そこまで価値がないの?」と思われるかもしれません。とんでもない。

私がAIに最大の価値を感じているのは、PDCAサイクルを、とんでもない速さで回せることです。

やってみる → データを取る → うまくいかなかった原因を調べる → また直してやってみる。この一周を、今までは人力で、膨大な時間をかけてやっていました。それをClaude Codeなどに手伝ってもらうと、分析も改善も桁違いに速い。だから、成功にたどり着くまでの速度が上がる

これは、正しい順番——ビジネスファーストで「誰の何を解決するか」を握れている人にとっては、とてつもない加速装置になります。逆に、土台のないAIファーストの人にとっては、間違った方向に猛スピードで進むだけの装置になってしまう。同じAIでも、順番ひとつで、味方にも敵にもなるんです。

「誰の何を解決するか」という土台の上にAIを載せると加速装置になり、土台のないAIファーストだと間違った方向に高速で進むだけになることを対比した図解 ▲ 同じAIでも、「ビジネスファースト」なら加速装置に、「AIファースト」なら暴走装置になる。効くのは順番。

天才である必要はない。順番を間違えないことです

最後に、少しだけ勇気の出る話を。

「人間力とか設計判断とか言われても、そんな才能ないよ」と思うかもしれません。でも、ここでいう人間力は、生まれ持った才能の話ではありません。

私自身、特別な天才ではありません。むしろ3,000万円の外注に失敗し、新橋の某有名コンサルティング会社に3年で1,800万円払い、経営の途中では最大4億円の借金を抱えた、失敗の多い人間です。料理なんて、詳細なレシピを渡されても作れないくらい不器用です。

それでも今こうしてAIで成果を出せているのは、才能があったからではなく、「誰の何を解決するか」を先に決めて、AIで高速に試して、うまくいくまでしつこく続けた——ただそれだけです。順番を間違えず、諦めずに回した。今はそのサイクルを、AIが猛烈に速くしてくれる。だからこそ、正しい順番さえ守れれば、成功できる人はむしろ増えるはずなんです。

「作れること」の値段がゼロになる時代は、たしかに怖い。でも、それは「人間の判断と、粘り強さ」に、これまで以上の価値が戻ってくる時代でもある。私はそう捉えています。

もしあなたが、AIは触っているけれどビジネスに繋がっていない、という感覚を持っているなら——足りないのは、たぶん新しいツールではありません。「AIツールは一通り触った。でも、ビジネスにならない」の正体という記事に、その続きを書きました。

この記事のポイント

  • AIで「作れること」はこの1年でコモディティ化し、値段がゼロに近づいた。スマホ・Excel・ブラインドタッチがたどった道と同じ
  • にもかかわらず勝てる人が減っているのは、多くが**「AIファースト」**(AIの能力が先で、ビジネスを後付け)になっているから
  • ビジネスの原則は不変。AIは解決の「手段」にすぎない。だから「ビジネスファースト・AIセカンド」=人間の土台の上にAIを載せる順番が強い
  • 価値は2つに移った。①「何を・誰のために作るか」を決める部分、②課題理解と、作った後に運用・改善し続ける人間力。ここはコピーできない
  • AIの本当の価値はPDCAの高速化。ただし効くのは、正しい順番(ビジネスファースト)のときだけ。順番を間違えると、間違った方向に高速で進むだけになる

私は BANSOU CTO™ という形で、「AIで何を作るか」を経営者と一緒に決めるところから、企業に伴走しています。ツールの使い方ではなく、「あなたの会社で、誰の・どの問題を、AIでどう解けば一番効くのか」——その順番の設計こそ、私がいちばんお役に立てる部分です。気になった方は、気軽にお声がけください。


伊藤翔太 株式会社IIWAYO.TECH 代表取締役 / 株式会社リサスティー 代表取締役