「これ、外注したらいくら?」自分が作った基幹システムをAI 3社に見積もらせたら、全部「2〜3億円」だった話
設計書をAIに読ませたら、ChatGPT・Gemini・Claudeが揃って「2〜3億円」。作ったのは、ひとり。

先日、自分がほぼ一人で作った業務システムの設計書を、ChatGPT・Gemini・Claudeという3つのAIに、そのまま読ませてみました。 質問は一つだけ。「これをシステム開発会社(SIer)に発注したら、いくらかかりますか?」 返ってきた金額を見て、正直、少し手が止まりました。
私は今、株式会社IIWAYO.TECHという一人会社で、複数のクライアントの業務システムをAIで開発しています。
そのうちの一つに、ある老舗BtoB商社さんの基幹システムがあります。中古品を買い取り、整備し、在庫として管理し、複数の販路で販売する——その一連の業務をまるごと一つのシステムで回す、いわば会社の背骨にあたるものです。買取案件の管理から、在庫、販売、発送、問い合わせ対応、社内の権限管理まで含みます。
規模もそれなりで、全体像を自分で把握するために「設計書」を出力していました。データベースのテーブルが187個、サーバー側の処理(Edge Function)が111本。最も大きいテーブルは、1行に253項目あります。
その設計書がちょうど出せたので、「これは普通に外注したら、いくらくらいなのだろう」と思い、3つのAIにそのまま読ませて聞いてみた、というのが今回の話です。
3つのAIが、口を揃えて「2〜3億円」と言った
結果がこちらです。3社とも、事前に示し合わせたわけでもないのに、ほぼ同じレンジに着地しました。
| AI | 「外注したらいくら?」への回答 |
|---|---|
| ChatGPT | フルスコープなら 3〜7億円(どれだけ安く見積もっても1.5億円) |
| Gemini | 8,000万〜3億円以上。「中堅〜大企業の基幹システムを丸ごと作り直すレベル」 |
| Claude | 中央値 2億円前後、規模次第で3〜4億円。工数にして 120〜180人月 |
「120人月」というのは、エンジニア一人が120ヶ月=10年かけて作る量、あるいは10人がかりで1年ぶっ通し、という意味です。
なかでもGeminiは、設計書を読んだあとに、こう書いてきました。
えっ……!思わずシステムとしての思考が停止しかけました。これをほぼ1人で、しかも実質4ヶ月(+追加改修3ヶ月)で作られたのですか?
控えめに言って、信じられないほど圧倒的な開発力です。
AIに思考を止められる側になるとは、思っていませんでした。
▲ 実際のGeminiの返答。「ほぼ1人で、しかも実質4ヶ月で?」と、AIのほうが驚いてしまっています。
実際は、私ひとり・実質4ヶ月で作った
ここが本題です。
このシステムは、私ひとりで、実質4ヶ月で「使える」水準まで作りました(そこから改修を重ねて、今に至ります)。
もちろん、魔法ではありません。その4ヶ月は、ほぼ毎日どこかのバグと向き合っていましたし、今も毎週のように手を入れています。「AIに丸投げしたら億のシステムが降ってきた」という話ではまったくない、ということは正直に書いておきます。
それでも、SIerに頼めば10人×1年がかりになる規模のものが、一人+AIで数ヶ月で形になったのは事実です。ちなみに、こういうシステムを同時に数本開発してます。
では、何をどう使ったのか。
「Flow Coding」という作り方
私がやっているのは、自分で Flow Coding (フローコーディング)と呼んでいる進め方です。中身はシンプルで、次の3つの組み合わせです。
- Lovable(画面をAIと会話しながら組み上げるツール)
- Claude Code(設計・実装・修正を任せられるAI開発環境)
- Supabase(データベースやサーバー機能をまとめて用意してくれる基盤)
考え方は「人間は方針と判断に集中し、手を動かす部分はAIに大量に肩代わりさせる」。これに尽きます。
従来は、PM・設計・プログラマー・テストと役割を分け、その間の会議や引き継ぎに膨大な時間が溶けていました。それを一人の頭の中で完結させると、そのオーバーヘッドがまるごと消えます。ここが一番効いています。一人社長でも、AIを使えば10人分の仕事ができる——というのは、精神論ではなく、構造の話だと考えています。
すごいのは「量」ではなく「判断の質」だった
正直に言うと、テーブル187個・処理111本という"量"は、AIを使えばある程度は押し切れます。本当に効いていたのはそこではない、と3つのAIの評価を読んで、逆に気づかされました。
3社が揃って評価したのは、たとえばこういう部分です。
- 本人確認(eKYC) を暗号化して保存し、「誰がいつ中身を見たか」まで監査ログに残す作り込み
- AIが勝手にデータを書き換えない設計(AIは"提案"までしか行わず、実行は人間の承認を挟む。AIを業務に組み込むときの定石です)
- 操作を1件ずつ 巻き戻せる監査ログや、役割ごとに見える範囲を厳密に分ける権限制御
つまり「大量の登録・編集画面を書いた」のではなく、「基幹システムとして正しい設計判断を、何百回と積み重ねた」。そこをAIたちは見ていました。ここは人月では測れない部分です。
——ここで、もう一つの話をさせてください
実はこの設計書をめぐって、先日、ある打ち合わせがありました。投資の判断をする立場の経営者の方に、システムの内容をご説明する場です。
その方からは、こう言われました。「費用や期間の根拠を判断したいので、専門家が共通言語で読み解ける設計書を見せてほしい」。まっとうなご要望です。
これに対して、私はこうお答えしました。
「今のAIを使った開発では、最初に設計書を作り込むこと自体が、もう要らなくなってきています」
少し補足させてください。私が伝えたかったのは、こういうことです。
- この1年で、システムの作り方は180度変わりました。 大げさではなく、パラダイムシフトが起きています。
- 設計書は、AIに「出して」と言えば、いつでも最新の状態で出てきます。 だから、人間が何ヶ月もかけて先に作り込むという工程そのものの意味が、薄れました。
- 最初に要件をガチガチに固定するより、伴走しながらアジャイルに最適化していく方がいい。 今はそういう時代です。
- なぜなら、今の要件を決めても、半年後・1年後には状況が変わっていて、その要件が正しいとは限らないからです。 実際、現場で使ってもらううちに「これは入れない方がよかった」となる機能もあります。だからこそ、その時々の状況に合わせて、足したり引いたりしながら作る方がいい。
もちろん、この話がすぐに「なるほど」と受け入れられるわけではありません。その打ち合わせでも、相手の方は「家を設計書なしで建てる人はいない」とおっしゃいました。まったくその通りだと思います。
なので私は、こうお答えしました。「設計書を"人"は見ないんです。"AI"が見ます。ただ、人が必要なときには、人が読める設計書をAIがすぐに出します」と。
作り込む対象ではなく、必要なときに一瞬で生成されるもの。設計書の立ち位置が、そこまで変わってきているというのが、私の実感です。
料理のレシピと、同じなんです
この打ち合わせの最後に、別の経営者の方と、こんな話になりました。私が使った、料理のたとえ話です。個人的には、これがいちばん腑に落ちる説明だと思っています。
設計書は、料理のレシピのようなものです。
▲ レシピ(設計書)があることと、同じものを作れることは、まったくの別物です。
たしかに、レシピにはすべて書いてあります。火の入れ方、何グラム、切り方——かなり細かく書ける。設計書もそれと同じで、AIに言えば細部まで出てきます。
でも、同じレシピでも、作る人によって仕上がりはまったく変わります。
カルボナーラくらいなら、誰が作ってもだいたいカルボナーラになるでしょう。けれど、いま作っているような基幹システムは、たとえるなら 「一皿3万円のフレンチのフルコース」 に近い。熟練のシェフが作れば素晴らしいものになりますが、私が同じレシピを渡されても、そう簡単には再現できません。
私自身、料理はほとんど出来ません。どんなに詳細なフルコースのレシピを渡されても、たぶん作れないし、そもそも レシピを読んでも意味が分からない と思います。「火の入れ方」「切り方」と書いてあっても、その一つひとつが何を指すのか分からないからです。
『グランメゾン東京』というドラマで、まさに同じ話がありました。ライバル店のレシピを盗んで、その通りに作っても、まったく美味しくない。レシピは、そこにある。でも、同じものは作れない。
3つのAIが見積もりの最後に「この設計書だけを渡されても、同じ品質のものを再現するのは容易ではない」と書いていたのも、まったく同じことを指しています。設計書(レシピ)があることと、同じものを作れることは、まったくの別物なのです。
その設計書を"紙"にするだけで、200〜300万円かかっていた
もう一つ、費用の話をさせてください。
これまでのやり方だと、「今あるシステムの設計書を、人が読める"紙"として一から起こしてほしい」と既存のシステム会社に頼むと、コードから全機能を解析し直す作業になります。動いているシステムを丸ごと読み解いて、ドキュメントに書き起こす。これだけで、私の肌感覚でも 安くて200〜300万円、期間にして1〜2ヶ月 はかかります。
つまり、ひと昔前は「設計書という"紙"を作るためだけに、数百万円」が当たり前でした。
ところが今は、その設計書が、AIに一言頼めば数分で出てきます。この落差こそ、パラダイムシフトのわかりやすい一例だと思っています。
設計書の"意味"が、一周まわって変わった
ここまで書いて、自分でも面白いなと思うことがあります。
かつて設計書は、人間が何ヶ月もかけて作り、数百万円をかけてでも用意する、開発の「入口」でした。作ること自体に、大きな労力と価値がありました。
今は違います。設計書はAIが一瞬で出します。だから「作ること」には、もう大きな価値がありません。
さらに言えば、これだけ巨大で複雑なシステムになると、人が一目で読んで理解できる設計書というものが、そもそも出てこなくなります。 読み解くには、高度なITリテラシーが要る。そして——その「読み解く」作業こそ、いまはAIがやります。
整理すると、こうなります。設計書は、AIが書く。そのAIが書いた設計書を、AIが読む。 人間は、必要なときにAIに噛み砕いてもらえばいい。設計書をめぐる仕事が、一周まわってAIの中で完結し始めているのです。
——にもかかわらず、そのAIが出した設計書を、別のAIたちに読ませたら「2〜3億円」という評価が返ってきた。
設計書は、「人が数百万円かけて作るもの」から、「いつでも生成できて、価値の証明や、人と話すための共通言語として使うもの」へ、役割そのものが変わったのだと思います。今回の見積もりは、まさにその新しい使い方を、たまたま自分でやってみた、ということでもあります。
これが意味すること:「2〜3億円の外注が常識」の終わり
念のため補足すると、「2〜3億円」はあくまで SIerに発注したらの換算額 であって、私がそれで稼いだわけではありません。
けれど、この数字が指しているのは、もっと大きな変化だと思っています。
▲ 「SIerに2〜3億円」が当たり前だった常識が、「ひとり+AIで数千万円・数ヶ月」に変わりつつあります。
これまで、会社の基幹システムを新しく作るには、SIerに2〜3億円を払い、1年以上待つのが"当たり前"でした。設計書という"紙"を作るだけでも、数百万円。その常識が、一人+AIで、数千万円・数ヶ月というところまで来ています。DX(デジタル化)の「内製化」が、スローガンではなく、現実の選択肢になったということです。
2〜3億円という見積もりと、実際の内製コスト。この 差分そのもの が、これからの中小企業にとっての武器になると、本気で思っています。
この記事のポイント
- 自分がほぼ一人・4ヶ月で作った基幹システムを、ChatGPT・Gemini・Claudeに見積もらせたら、3社とも「2〜3億円(大手なら7億円)」で一致した
- タネは Flow Coding(Lovable+Claude Code+Supabase)。人間は判断に集中し、手を動かす部分はAIに任せる
- この1年で、システム開発はパラダイムシフトを起こしている。設計書は「作り込むもの」から「AIがいつでも出すもの」へ変わり、要件を固定するより、伴走しながらアジャイルに最適化する時代になった
- 設計書は料理のレシピと同じで、あることと同じものを作れることは別物。しかも巨大なシステムでは、それを読み解くのもAIの仕事になりつつある(AIが書き、AIが読む)
- 効いていたのは"コードの量"より "設計判断の質"。そして、設計書を"紙"にするだけで数百万円、システム本体は2〜3億円——その外注が当たり前だった時代は、静かに終わりかけている
こうした「SIerに2〜3億円で外注していた基幹システムを、内製で持てるようにする」動きを、私は BANSOU CTO™ という形で、企業に伴走しながらお手伝いしています。「うちの業務システムは、外注したら結局いくらなのだろう」——そこが気になった方は、気軽にお声がけください。設計書をAIに出させて、価値を見積もるところから、ご一緒できます。
伊藤翔太 株式会社IIWAYO.TECH 代表取締役 / 株式会社リサスティー 代表取締役