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「社長の壁打ち相手」がいない会社は、静かに衰退する ── 経営の孤独を解消する外部CTOという選択
経営者の孤独を解消し、盲点を突く。技術と経営を繋ぐ「外部CTO」という新機軸の壁打ち相手
「誰にも相談できない」
経営者の多くが、この言葉を口にします。
社員には言えない。役員にも本音は話せない。家族に話しても理解されない。経営者向けの交流会に出ても、表面的な会話で終わる。
経営者は、孤独です。
中小企業庁「2020年版 小規模企業白書」によれば、従業員数0人の小規模企業では製造業で48.1%、非製造業で44.0%の経営者が「日常の相談相手がいない」と回答しています。さらに、相談できていない理由として約半数が「適切な相談相手とのつながりがないから」と答えています(同白書 第2節)。
これは弱音ではありません。構造的な問題です。
社員に「この事業、本当にうまくいくかわからない」と言えば、不安が広がり、最悪の場合は退職者が出ます。役員に本音を話せば、社内政治が動く。外部のコンサルタントに相談すれば、月額100万円以上の請求書が届く。
結果として、社長は一人で考え、一人で決め、一人で責任を負います。
しかし、一人で考えた戦略は、盲点だらけです。
私自身、12年以上会社を経営してきました。事業売却(M&A)も経験しましたし、事業の失敗で3,000万円の損失を出したこともあります。その中で痛感したのは、「あの時、率直に指摘してくれる人がいれば、この失敗は避けられた」ということでした。
今回は、なぜ経営者に「壁打ち相手」が必要なのか、そしてなぜ外部CTOがその役割を果たせるのかについてお伝えします。
社員は「壁打ち相手」にはなれない
まず、社員に壁打ち相手を期待するのは、構造的に無理があります。
理由は三つあります。
一つ目は、利害関係です。社員にとって、社長の判断は自分の雇用や報酬に直結します。だから、社長のアイデアに対して「それは間違っていると思います」とは言えない。言ったところで、評価に影響するかもしれない。リスクを取ってまで本音を言う社員は、ほとんどいません。
二つ目は、情報の非対称性です。社長は会社の財務状況、資金繰り、将来の計画、M&Aの可能性など、社員には共有できない情報を持っています。その情報を抜きにした議論では、的確なフィードバックは得られません。
三つ目は、視座の違いです。社員は自分の担当業務の範囲で考えます。それは当然のことです。しかし、社長が求めているのは、事業全体を俯瞰した上でのフィードバックです。「営業部としてはこう思います」ではなく、「この会社の3年後を考えると、こうすべきです」という視点です。
これは社員が悪いのではありません。立場が違うのです。
経営者コミュニティでも解決しない理由
「じゃあ経営者同士で壁打ちすればいいじゃないか」
そう思う方もいるでしょう。実際、私自身も複数の経営者コミュニティに参加しています。
経営者同士の交流には大きな価値があります。しかし、「壁打ち相手」としては限界があります。
私自身、ビジネスコミュニティで多くの経営者と議論してきた経験があります。刺激を受けることは多いし、視野が広がることも事実です。しかし、自社の具体的な課題について踏み込んだ議論ができたかというと、正直なところ難しかった。
まず、同業種の経営者には話しにくいことがあります。競合に近い存在に、自社の弱みや戦略を詳細に話すのはリスクです。
異業種の経営者は安心して話せますが、今度は業界知識がないため、フィードバックの精度が落ちます。「へえ、大変だね」で終わってしまう。
さらに、経営者同士の交流は基本的に「対等な立場」です。相手の事業に深く入り込む義務も権限もありません。月に1回の食事会で話を聞いてくれても、翌日にはそれぞれの事業に戻っていく。
壁打ちに必要なのは、「あなたの事業に深くコミットし、継続的に関わり、責任を持ってフィードバックする存在」です。月1回の食事会では足りません。
AIは「壁打ち相手」にはなれない
最近、ChatGPTやClaudeなどのAIを「壁打ち相手」として使っている経営者も増えています。
私自身もAIを毎日使いますし、アイデアの整理や情報収集のツールとしては非常に優秀だと思います。しかし、経営者の「本気の壁打ち相手」としては、AIには決定的な限界があります。
まず、AIには意志がありません。
AIは聞かれたことに対して回答を返すことは得意です。しかし、「社長、その判断は間違っていると思います。なぜなら——」と、自分の意志で切り込んでくることはできない。AIは基本的に「寄り添う」ことはできても、「本気でぶつかる」ことはできないのです。
壁打ちに必要なのは、相手の意見に同調することではなく、時に対立し、時に厳しい指摘をすることです。「社長、それは顧客のニーズではなく、社長自身のやりたいことですよね?」——こうした本質を突く問いかけは、相手のビジネスを深く理解し、その成功に責任を感じている人間だからこそできることです。
次に、AIには文脈の「体温」がありません。
社長が「最近、ちょっと疲れてまして……」と言った時、それが単なる体調の話なのか、事業に対するモチベーションの低下なのか、資金繰りへの不安の表れなのか——継続的に関わっている人間であれば、声のトーンや表情から真意を読み取れます。AIにはそれができません。
そして、AIには「立場」がありません。
AIのフィードバックに対して、社長は「まあ、AIの言うことだしな」と簡単に無視できます。しかし、レベニューシェアで利害を共にしている外部CTOの言葉は、重みが違います。その人の報酬がかかっている。本気で言っている。だからこそ、社長も本気で受け止めます。
AIは優れた「思考の補助ツール」です。しかし、経営の意思決定を左右する「壁打ち相手」とは、根本的に役割が違います。
実際に起きた「壁打ち」の効果
壁打ちの価値は、理屈ではなく、実際の現場で証明されます。
あるクライアントの例をお話しします。美容室を3店舗展開する経営者から、「スタッフの離職が止まらない」という相談を受けました。
最初のミーティングで社長は「給料を上げるしかない」と言っていました。しかし、壁打ちを重ねる中で、私は一つの質問をしました。
「スタッフが辞める本当の理由を、直接聞いたことはありますか?」
社長は「退職面談はしている」と答えましたが、よく聞くと退職面談の内容は「一身上の都合です」という表面的なものばかり。辞める人間が、社長に本音を言うわけがありません。
そこで、匿名でスタッフの声を集められるフィードバックシステムを2日で作りました。シンプルなWebアンケートで、スマホから3分で回答できる仕組みです。匿名性が担保されているため、スタッフは安心して本音を書けます。
結果として出てきた離職の本当の理由は「給料」ではなく、「シフトの不公平感」と「技術研修の機会がない」でした。
具体的には、「特定のスタッフだけが土日休みを取りやすい」「新しい技術を学ぶ機会がなく、キャリアの成長が見えない」という声が多数寄せられました。
社長は驚いていました。「給料を上げる」という判断をしていたら、年間で数百万円のコスト増になっていたところです。しかし、実際に必要だったのはシフト管理の仕組み改善と月1回の研修制度。コストはほとんどかかりませんでした。
壁打ちがなければ、社長は「給料を上げたのに離職が止まらない」という最悪の結果になっていた可能性があります。
外部コンサルタントの限界
では、外部のコンサルタントはどうか。
私自身、経営者として何人かのコンサルタントと仕事をしてきました。その経験から言えることがあります。
外部コンサルタントの多くは、「分析」はできても「実行」はできません。
市場分析、競合分析、戦略策定——これらは得意です。きれいなパワーポイントに整理して、納品してくれます。
しかし、「で、誰がやるんですか?」という質問には答えてくれません。
「御社で実行してください」
これがコンサルタントの標準的な回答です。
または、「人材採用しましょう」「外部委託で依頼しましょう」と追加で多額の費用がかかる提案をしてきます。 大企業は出来るかもしれませんが、中小企業には非常に難しいと思います。
実際に私が過去に依頼したコンサルタントは、3ヶ月かけて100ページ超の戦略資料を作ってくれました。内容は的確でした。しかし、実行フェーズに入った途端、「ここからは御社の領域です」と去っていきました。残されたのは立派な資料と、それを実行する手段のない現場でした。100ページの資料はそのまま棚にしまわれ、半年後には誰も開かなくなっていました。
コンサルタントが悪いわけではありません。彼らのビジネスモデルが「分析と提言」で完結しているのです。しかし、中小企業の社長が本当に必要としているのは、「一緒にやってくれる人」です。
さらに、コンサルタントは現場を知りません。御社の社員がどう動いているか、どんなシステムを使っているか、どこにボトルネックがあるか——これらは、実際に現場に入らないとわからないことです。
そして何より、コンサルタントは高い。月額100万円以上が一般的で、それが半年、1年と続く。「壁打ち相手が欲しい」という動機で支払うには、あまりに重い金額です。
実は、私自身も高額コンサルティングに投資した経験があります。
新橋にある某有名コンサルティング会社の、月2時間50万円のコンサルティングを3年間受けていました。年間600万円、3年間で合計約1,800万円です。現在はさらに値上がりし、2時間100万円になっていると聞きます。
では、そこで何を得たか。正直に言えば、得たものは「会社売却(M&A)という目標設定」。それ一つだけでした。
誤解しないでほしいのですが、その目標設定自体は有効なアドバイスでした。実際に私はその後、研究機器リセール事業を売却することに成功しています。しかし、1つのアドバイスのために1,800万円を払ったようなものです。
何より苦痛だったのは、毎月2時間のコンサルティングで「やる気」は出るのですが、実行するのは結局自分自身だということです。助言はもらえても、実行する時間も人手もない。月に一度、現状報告をして、新しい課題を指摘されて、また一人で走る。毎回のコンサルティングは刺激になりましたが、同時に「言われたことをやりきれていない自分」に向き合う苦痛でもありました。
この経験から私が学んだのは、「助言だけでは事業は変わらない」ということです。助言+実行。この両方を担える存在が、経営者には本当に必要なのです。
なぜ外部CTOが「最適な壁打ち相手」なのか
私が提供しているBANSOU CTO(伴走型CTOサービス)は、システム開発の支援サービスです。
しかし実際にクライアントと関わっていると、最も価値を感じてもらっている場面は、コードを書いている時ではありません。
社長と一対一で話している時です。
「この新規事業、どう思いますか?」 「この業務フロー、もっと効率化できませんか?」 「うちの会社の強みって、何だと思いますか?」
こうした問いに対して、率直にフィードバックをする。それが、BANSOU CTOの隠れた——しかし最も重要な——機能です。
なぜ外部CTOが壁打ち相手として優れているのか。理由は四つあります。
第一に、経営と技術の両方がわかることです。私自身、12年以上会社を経営し、事業売却(M&A)も経験しています。同時に、システム開発の最前線にいます。AIを活用した開発手法(Vibe Coding)で700万行以上のコード生成実績があり、日々技術のアップデートを追い続けています。「経営の話」と「技術の話」の両方が同じ解像度でわかる。これは、経営コンサルタントにもシステムエンジニアにもできないことです。
第二に、利害関係がシンプルであることです。BANSOU CTOの報酬体系にはレベニューシェア(成果報酬)が含まれています。お客様の事業が成長すれば、私の報酬も増える。逆に、うまくいかなければ、私も損をする。だからこそ、お世辞を言う必要がありません。「その方向は危険です」「そのアイデアは成功率が低いと思います」——本当のことを言えます。
第三に、外部の人間だからこそ話せることがあるということです。社内の人事の話、幹部の評価、事業撤退の検討、資金繰りの悩み——これらを社内の人間に話すことは、リスクしかありません。しかし、外部のCTOであれば、守秘義務の下で何でも話せます。
第四に、壁打ちの結果を「すぐに形にできる」ことです。これが、外部コンサルタントとの決定的な違いです。「こういうシステムがあればいいですね」で終わらない。翌日にはプロトタイプを作って見せることができる。実際に私のSokuApp(速くアプリ)サービスでは、最短数日でプロトタイプを作成し、社長に「これ、こういうイメージですか?」と見せることができます。画面を見ながら話すのと、言葉だけで話すのとでは、議論の精度がまったく違います。アイデアを議論するだけでなく、形にするところまで一気通貫で対応できるのが、技術力を持つ外部CTOの強みです。
壁打ちが生んだ「予想外のアイデア」
実際にあったエピソードを紹介します。
ある飲食チェーンの社長から、「スタッフ別にGoogleクチコミを集めるQRコードシステムを作りたい」という相談を受けました。
技術的には難しくない依頼です。言われた通りに作ることもできました。
しかし、壁打ちの中で「なぜクチコミを集めたいのか」を深堀りしていくと、本質的な目的は「お客様のフィードバックを業務改善に活かしたい」ということでした。
であれば、スタッフ別のクチコミだけでなく、「料理別のフィードバック」も同時に取得できれば、メニュー改善にも使える。さらに、フィードバックデータを自動集計して、月次の改善レポートを自動生成する仕組みも組み込める。
社長は「それは考えていなかった。ぜひやってほしい」と即決でした。
結果として、当初の依頼内容よりもはるかに価値のあるシステムが完成しました。このシステムの導入後、クチコミ収集数は約3倍に増え、そのデータを基にしたメニュー改善で客単価の向上にもつながりました。
これは、壁打ちなしには生まれなかったアイデアです。
「QRコードシステムを作ってください」という発注書を受け取って、そのまま作る開発会社には、この提案はできません。なぜなら、社長の「本当の目的」を聞いていないからです。
壁打ちの価値は、依頼内容の「裏側」にある本当のニーズを掘り出すことにあります。
壁打ちで救われた「撤退判断」
壁打ちの価値は、「やるべきこと」を見つけるだけではありません。「やるべきではないこと」に気づかせることも、同じくらい重要です。
ある経営者は、新規事業としてAIチャットボットの自社開発を検討していました。市場調査もして、投資計画も作って、すでに数百万円の開発費を見積もっていました。
壁打ちの中で、私はこう聞きました。
「その機能、既存のツールで月額数千円で実現できますが、なぜ自社開発するのですか?」
社長は少し考えて、「……確かに、自社開発にこだわる理由はないかもしれません」と答えました。
結果、数百万円の開発投資を回避し、月額数千円の既存ツールで目的を達成しました。「やらない判断」によって守られた数百万円は、別の成長投資に振り向けられました。
この話は、私自身の痛い経験にも通じています。過去に私も、自社サービスの開発に固執して3,000万円の損失を出したことがあります。あの時、「それは既存のもので代替できるよ」と言ってくれる壁打ち相手がいれば、結果は違っていたはずです。だからこそ、クライアントに対して「それは必要ないと思います」と言うことに躊躇がありません。
社員はこの提案ができません。社長が「やる」と言ったことに「やらなくていいのでは」とは言えないからです。
外部のCTOだからこそ、「それは必要ないと思います」と率直に言える。この「ブレーキ」の機能が、経営にとって非常に重要なのです。
フルタイムCTO vs 外部CTO:コストと効果の比較
「CTOが必要なのはわかった。でも、それならフルタイムで採用すればいいのでは?」
この疑問は当然です。比較してみましょう。
フルタイムCTOの採用コストは、年収だけでも1,000万円〜2,000万円が相場です。さらに採用活動のコスト(エージェント利用料で年収の30%程度)、社会保険料、福利厚生、オフィススペース、PC・ツール代——トータルで年間1,500万円〜3,000万円が必要です。
しかも、採用できるかどうかが最大の問題です。「経営がわかるCTO」は市場で最も希少な人材の一つです。技術力がある人は多い。しかし、経営視点を持ち、社長と対等に議論でき、かつ手を動かしてシステムも作れる人材は、ほとんどいません。
そして仮に採用できたとしても、その人が自社にフィットするかどうかは博打です。3ヶ月の試用期間で判断するのは難しい。技術力はあるが経営視点がなかった、あるいは社長との相性が合わなかった——こうしたミスマッチは頻繁に起こります。
さらに言えば、フルタイムCTOには「社員」としてのしがらみが生まれます。入社直後は率直に意見を言えていた人が、半年、1年と経つうちに社内の人間関係に配慮して本音を言えなくなる。部下ができれば部下の評価が気になるし、他の役員との関係も無視できない。これは組織の構造的な問題であり、個人の資質の問題ではありません。
外部CTOには、このしがらみが一切ありません。社内の昇進も昇給も関係ない。だからこそ、純粋に「事業にとって何が最善か」だけを考えてフィードバックできるのです。
BANSOU CTOの場合、初期の審査期間は月額5万円から始められます。2ヶ月の審査期間で、お互いの相性を確認してから本契約に移行する。合わなければ、そこで終了できる。
フルタイムCTOを採用して3ヶ月で「合わない」と判断した場合のコスト:数百万円。 BANSOU CTOの審査期間2ヶ月のコスト:10万円。
リスクの差は歴然です。
「本音を言ってくれる人」の価値
ある経営者から、こんなことを言われたことがあります。
「伊藤さんは、うちの社員に言えないことを言ってくれる。それだけでも月額費用の価値がある」
最初は褒め言葉として受け取りましたが、よく考えると、これは深刻な問題を示しています。
社長に本音を言える人が、社内に一人もいない。
これは、その会社が危険な状態にあることを意味します。
社長のアイデアに全員が「いいですね」と答える組織は、イエスマンの集団です。社長が間違った方向に進んでも、誰も止められない。問題が大きくなってから「実は、前から気になっていたんですが……」と言い出す。
それでは遅いのです。
経営の意思決定は、早期のフィードバックによって質が上がります。間違いに気づくのが早ければ早いほど、修正コストは小さくなる。ソフトウェア開発の世界では「バグの修正コストは発見が遅れるほど指数関数的に増大する」と言われますが、経営判断もまったく同じです。方向修正が1ヶ月遅れれば、損失は何倍にも膨らむ。
これは感覚論ではなく、データでも裏付けられています。
Harvard Business Reviewが実施したCEO Snapshot Surveyによると、CEOの50%が「孤独を感じている」と回答し、そのうち61%が「孤独が自分のパフォーマンスに悪影響を与えている」と答えています。つまり、本音で話せる相手がいないことは、経営者個人の感情の問題ではなく、会社の業績に直結する経営課題なのです。
さらに、冒頭でも引用した中小企業庁「2020年版 小規模企業白書」では、日常の相談相手がいる経営者の方が経常利益が「増加傾向」にある割合が高いというデータが示されています。相談相手の存在は、メンタルの安定だけでなく、実際の経営成績にも好影響を与えているのです。
壁打ち相手の価値は、「正しい答えを教えてくれる」ことではありません。「間違いに早く気づかせてくれる」ことです。
CEOの熱量を「加速」させる存在
私は、CTOの本質は「CEOの熱量を加速させる存在」だと考えています。
CEOには熱量がある。アイデアがある。やりたいことがある。
しかし、熱量だけでは限界があります。
人海戦術で回せるのは、ある規模までです。社員が10人を超え、20人を超え、事業が複数に広がっていく過程で、必ず「仕組み」が必要になる。
たとえば、「日報をExcelで管理している」「顧客情報が個人のスマホに入っている」「請求書を毎月手作業で作っている」——こうした状態は、社員が5人までなら何とかなります。しかし10人、20人になると、情報の抜け漏れ、二重作業、属人化が加速度的に増えていきます。
その「仕組み」を一緒に作り、CEOのアイデアを形にし、事業の加速力を上げる。それがCTOの役割です。
しかし、フルタイムのCTOを採用するのは、中小企業にとって現実的ではありません。
年収1,000万円以上が相場。採用できたとしても、その人が「本当に経営がわかるCTO」かどうかは、博打です。技術力があっても経営視点がないCTOは、高価なプログラマーにすぎません。
BANSOU CTOは、この問題を解決するために設計しました。
フルタイムCTOの1/10以下のコストで、経営と技術の両面から社長の壁打ち相手になる。そして、議論の結果をシステムとして形にする。
「壁打ち+実行」。これが、外部CTOならではの価値です。
効果的な壁打ちの「頻度」と「形式」
「壁打ち相手がいればいい」とわかっても、「具体的にどう壁打ちするのか」が見えないと動けません。
私のクライアントとの壁打ちの実態をお伝えします。
頻度は、基本的に週1回30分〜1時間です。これ以上多いと社長の負担になり、これ以下だと間隔が空きすぎてコンテキストが途切れます。
形式は、オンラインミーティングが中心です。画面共有でシステムのプロトタイプを見せながら話すこともあれば、純粋に経営の相談だけの回もあります。
重要なのは「議題を事前に決めないこと」です。
アジェンダを決めてしまうと、「予定された話題」しか話せなくなります。しかし、経営者の頭の中で最も重要なことは、往々にして「アジェンダに載せるほどでもない、しかし気になっていること」です。
「最近、ちょっと気になっていることがあるんですが……」
この一言から始まる会話が、最も価値のある壁打ちになることが多い。
だから、私は「今日は何を話しましょうか?」ではなく、「最近、何か気になることはありますか?」と聞くようにしています。
実際の壁打ちがどう進むか、典型的なパターンをお話しします。あるクライアントとのミーティングでは、最初の10分は「最近あったこと」の共有から始まります。新しい取引先との商談、社員の退職相談、競合の動き——社長の頭の中にあることを自由に話してもらいます。次の20分は、その中で最も重要なテーマを深掘りします。そして最後の10分で「次のアクション」を決める。この流れを繰り返すことで、社長の思考が整理され、優先順位が明確になっていきます。
ちなみに、壁打ちの間にメモを取りながら会話することも重要です。会話の中で出てきたアイデアは、その場では鮮明でも翌日には忘れてしまうことが多い。私は壁打ちの後に必ず要点を整理して共有するようにしていて、クライアントからは「あの議事メモがあるから安心して話せる」と言われることもあります。
本気の相談相手を選ぶ基準
もし本気で相談できる相手を探しているなら、以下の三つの基準を持っておくことをお勧めします。
第一に、「あなたのビジネスと利害が一致する関係性であること」。完全に無関係な第三者は、フィードバックに責任を持ちません。あなたのビジネスが成功しても失敗しても、彼らには影響がない。理想は、最初から直接的な利害関係があることではなく、関わっていく中で自然とウィンウィンの関係が出来上がっていくこと。お互いの成功が、お互いの利益になる。その構造があるからこそ、フィードバックに本気が宿ります。
第二に、「耳の痛いことを言える関係性であること」。「いいですね」しか言わない相手は、相談相手ではなく応援団です。応援団も大事ですが、本気の相談には向きません。
第三に、「議論の結果をアクションに落とせること」。壁打ちで「こうしたほうがいい」という結論が出ても、実行に移せなければ意味がありません。自ら手を動かせる相手、あるいは実行をサポートしてくれる相手が理想です。
逆に言えば、「話は聞いてくれるけど、何も変わらない」という関係は、相談ではなくカウンセリングです。経営者が必要としているのは、気持ちの整理だけではなく、事業を前に進める力です。
この三つの基準を満たすのが、レベニューシェア型でウィンウィンの関係を築き、率直に意見を言い、システムとして実行まで担う外部CTOという存在です。
「本気の相談」が変えるもの
ここまで「壁打ち」という言葉を使ってきましたが、実際にクライアントとの関係が深まっていくと、それは単なる壁打ちではなくなります。「本気の相談」——経営者が本音を晒し、相手も本気で応える、そういう関係です。
本気の相談によって変わるのは、システムだけではありません。
社長の意思決定の質が変わります。
一人で考えていた時には見えなかった盲点が見える。「なんとなく」だった判断が、ロジカルになる。迷っていたことに、確信が持てるようになる。
ある社長は本気で相談できる相手を得てから、「意思決定のスピードが明らかに上がった」と言いました。以前は1ヶ月悩んでいたことが、1週間で決められるようになった。それだけで、事業の回転速度が変わったそうです。
そして何より、孤独が和らぎます。
経営の孤独は、完全にはなくならないかもしれません。しかし、「この人には何でも話せる」という存在が一人いるだけで、社長のメンタルは大きく変わります。
私のクライアントの中に、契約当初は毎回のミーティングで表情が硬く、言葉を選びながら話す社長がいました。しかし3ヶ月ほど経った頃から、「実はこんなこともあって……」と笑いながら話してくれるようになりました。事業の数字が劇的に変わったわけではありません。ただ、「本気で相談できる相手がいる」という安心感が、社長自身の判断力と行動力を引き出したのだと感じています。
私は、クライアントの社長に対して、常にこう伝えています。
「社長、何でも話してください。技術の話じゃなくていいです。経営の悩み、人の悩み、将来の不安——何でも聞きます。そして、私にできることがあれば、全力でやります」
システム開発の話から始まった関係が、いつの間にか経営全般の相談相手になっている。
それが、BANSOU CTOの自然な姿です。
おわりに:あなたには「本気で相談できる相手」がいますか?
もし今、経営の判断に迷っていること、誰にも相談できない悩みがあるなら、それは「本気で相談できる相手が必要」というサインです。
「自分には必要ない」と思う社長ほど、実はそういう存在を必要としていることが多い。私自身がそうでした。3,000万円の損失を出すまで、自分一人で何でも決められると思っていた。1,800万円をコンサルティングに投資しても変わらなかった。あの経験があるからこそ、今のクライアントには同じ轍を踏んでほしくないと心から思っています。
壁打ちという言葉はカジュアルに聞こえるかもしれません。しかし、本質は「本気の相談」です。経営者が飾らず本音を話し、相手も忖度なく本気で応える。その積み重ねが、経営の質を根本から変えていきます。
システムの話でなくて構いません。
まずは、「今こんなことに困っている」と話してみてください。
その一言が、経営を変えるきっかけになるかもしれません。本気の相談は、特別なことではありません。「信頼できる相手に、本音で話す」。それだけのことです。しかし、そのシンプルなことが、経営の世界では驚くほど難しい。
だからこそ、その環境を意図的に作ることに価値があるのです。
一人で抱え込む必要はありません。
この記事のポイント
- 中小企業経営者の約4〜5割に「日常の相談相手がいない」(中小企業庁 2020年版小規模企業白書)
- 社員・経営者仲間・AI・コンサルタントには、構造的に「本気の壁打ち相手」になれない理由がある
- Harvard Business Reviewの調査では、CEOの50%が孤独を感じ、61%がパフォーマンスへの悪影響を自覚している
- 外部CTOは「経営×技術の両面理解」「レベニューシェアによる利害一致」「壁打ちから実行まで一気通貫」という3つの強みを持つ
- 壁打ちの本質は「本気の相談」——信頼できる相手に本音で話し、忖度なく応えてもらうことが、経営の質を根本から変える
伊藤翔太 株式会社IIWAYO.TECH 代表取締役 / 株式会社リサスティー 代表取締役
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