私はAIに毎月50万円を課金している──広がる「AI課金格差」という、誰も語らない社会問題
「使えるかどうか」の前に、「課金できるかどうか」で勝負が決まり始めている

「AIを使える人と、使えない人。これから格差が広がる」
最近、よく聞く話です。私もその通りだと思います。
ただ、私が本当に問題だと感じているのは、その「使えるかどうか」の、さらに一歩手前にある分かれ目です。
それは、AIに課金できるかどうか。
スキルでも、知識でも、センスでもありません。シンプルに、お金を払えるかどうか。これが、AIを使いこなせるかどうかを分け始めています。
今日は、これを「自慢」でも「浪費の告白」でもなく、ひとつの社会問題としてお話ししたいと思います。
私はいま、AIに毎月約50万円を課金している
▲ 主要AIツールの最上位プランはどれも月200ドル。私はClaude Codeだけで3契約。従量課金やLovable等も足し、円安も重なって合計は月約50万円に。
いきなり生々しい話で恐縮ですが、私が毎月AIツールに支払っている金額は、ざっと50万円です。
「使いすぎでしょ」と思われるかもしれません。でも、AIで本気でシステムを作り、事業を回そうとすると、これくらいは普通にかかります。
内訳を、ざっくり説明します。
たとえば、AIにコードを書かせる開発ツール「Claude Code(クロードコード)」。最上位の「Max」プランは月200ドル。執筆時点(2026年6月)の為替は1ドル160円前後の円安ですから、これだけで月3万2,000円ほどです。
しかも私は、このClaude Codeを3契約しています。月200ドル×3で月600ドル、日本円にして月およそ10万円。Claude Codeだけで、です。
そして、これは"入口"の料金にすぎません。
実際にシステムを立ち上げたり、本格的なデータベースや機能を作り込んでいくと、そこに従量課金が数十ドル単位でどんどん上乗せされていきます。使えば使うほど、積み上がる。
さらに、AIはClaude Codeだけではありません。
- ChatGPT(OpenAI)の最上位プランも月200ドル
- GoogleのAI(Antigravityなど)の最上位プランも月200ドル
主要なAIツールの最上位プランは、判で押したようにどれも月200ドル前後。1つあたり約3万2,000円が、ツールの数だけ積み上がっていく。
そこに、指示文だけでアプリを作れるツール「Lovable(ラバブル)」などを足していくと——気づけば、月50万円です。
そして、これに拍車をかけているのが円安です。同じ200ドルでも、数年前なら2万円台で済んでいたものが、いまは3万円を超える。日本で最先端のAIを使う人にとって、円安は地味に、しかし確実にコストを押し上げています。
「無料版で十分」という、よくある誤解
▲ 無料版はすぐ制限の壁にぶつかる。有料版は使うほど生産性が伸び、結局は最上位プランしか選べなくなる。
「そんなに払わなくても、無料のAIで十分でしょ」
そう思う方も多いはずです。でも、無料版と有料版は、できることがまるで違います。
私自身、ちょっとした調べ物でChatGPTの無料版を使っていると、すぐに「規定の回数に達しました。しばらく待ってください」と止められます。これが無料版の限界です。肝心なときに、手が止まる。
特に、Claude Codeのような開発系のAIは厄介です。なぜなら、使えば使うほど生産性が上がるから。
便利だからこそ、どんどん使う。すると、すぐにレート制限(一定時間内に使える量の上限)に引っかかる。「もっとやりたいのに、待たされる」。結局、上限の大きい最上位プランしか、現実的な選択肢がなくなるんです。
つまり、AIを「ちゃんと使いこなす」段階に行こうとすると、最低でも月4万円くらいは払える人でないと、入り口にすら立てない。これが現実です。
トークンをケチっているうちは、いつまでも「使いこなし」には届かない。
このあたりの話は、以前 トークンをケチるな。トークンを燃やせ。 という記事にも書きました。あわせて読んでいただけると、この「お金の壁」の意味がより伝わると思います。
国内で起きる「課金格差」──「会社の1アカウント」の、その先
この問題は、すでに日本国内でも起き始めています。
たとえば、いま私の会社では、社員にAI開発を教えています。会社として契約すれば、1アカウントを用意して使ってもらうことはできます。ここまでは、会社の負担で何とかなる。
問題は、その先です。
社員一人ひとりが「もっとレベルアップしたい」「いずれ独立したい」と思ったとき。自分の名前で、個人契約をする必要が出てきます。そのときに、月4万〜10万円を自費で払えるか。
普通に考えて、簡単ではありません。
「やる気さえあれば、誰でもAIで成長できる」——そう言いたいところですが、現実には、**原資(つまり、払えるお金があるかどうか)**が、最初のハードルとして立ちはだかる。スキルや意欲を問う前に、お財布が問われてしまうのです。
これは、本人の努力ではどうにもならない、構造的な壁です。
ただ、日本にいる時点で、実はかなり恵まれている
とはいえ、ひとつ強調しておきたいことがあります。日本に住んでいる時点で、私たちは世界的に見ればかなり恵まれた側にいる、ということです。
たとえばClaude CodeのMaxプラン(月約3万2,000円)。これくらいなら、アルバイトで30時間ほど働けば十分に稼げる金額です。月5万円の原資をつくるのも、本気を出せば決して不可能ではない。「やるか、やらないか」のレベルまで、ハードルが下がっているのです。
これは、世界中どこでも当たり前のことではありません。次に書くとおり、その月5万円を、逆立ちしてもつくれない人たちが世界には大勢います。
だからこそ、日本にいる私たちが「原資がないから」で止まってしまうのは、少しもったいない。最初の一歩は、思っているよりずっと近くにあるのです。
世界で起きる「課金格差」──淘汰されるオフショア開発
そして、これは日本だけの話ではありません。むしろ世界規模では、もっと激しく起きているはずです。
象徴的なのが、オフショア開発です。
これまで先進国の企業は、人件費の安い国にシステム開発を委託することで、コストを抑えてきました。ところが、その「安さ」という最大の武器が、AIによって急速に溶けはじめています。低コスト労働で勝負してきたオフショアは、AIにコスト優位を侵食されている——そう指摘するレポートもあり(HatchWorks, 2026)、Deloitteの2025年の調査では、北米企業の64%が従来型のオフショアより近隣国(ニアショア)を優先すると答えています。
「だったらAIでいいよね」と、そもそも発注しなくなる。私は、単純な低コスト型のオフショア開発は、かなりの部分が淘汰されていくと見ています(この構造変化は オフショア開発はAI時代に通用するのか でも詳しく書きました)。実際、私の周りでも、オフショア開発をやめてAIでの内製開発に切り替えるシステム会社が、目に見えて増えています。IIWAYO.TECHでも、こうした「オフショアからAI内製への移行」を支援しており、実際にご相談をいただいています。
ここで、多くの人はこう言います。
「だったら、その国の人たちもAIを使えばいいじゃないか」
正論です。でも、ここでさっきの話に戻ってくる。
たとえばインドの若手エンジニアの月収は、おおよそ月4〜7万円ほど(Indeed)。フィリピンでは、エンジニアの時給が約450円という調査もあります(IT Jobs in Japan)。
そこへ、月200ドル(約3.2万円)のAIツールを、それも複数。月収の半分が消え、ひと通り揃えれば月収そのものが飛ぶ計算です。その課金を、これまでオフショアで生計を立ててきた人たちが負担できるでしょうか。
かなり厳しいはずです。
仕事がAIに奪われていく一方で、その同じAIを使いこなすための原資が、最も足りない。二重の意味で、不利な側に追い込まれてしまう。
結局、格差を生むのは「原資」だ
▲ 原資(お金)があればAIに課金でき、能力が上がり、さらに稼げる。この好循環に入れるかどうかが分かれ目になる。
ここまでの話を、ひとことにまとめます。
AIで自分の能力を高められるかどうかは、AIに課金する原資(お金)があるかどうかにかかっている。
そして、その原資の有無が、個人レベルでも、国レベルでも、これまで以上に大きな格差を生み出していく。
AIは「誰でも使える、平等な道具」のように語られがちです。たしかに、入口の無料版は誰にでも開かれている。でも、本気で使いこなす段階には、相応のお金がかかる。だからこそ、お金を払える人とそうでない人の差が、これまでとは比べものにならないスピードで開いていく。
私はここに、静かだけれど深刻な、社会問題のにおいを感じています。
「AIで世界はフラットになる」という言葉を、私は完全には信じていません。むしろ、新しい分断が始まっている。それも、努力や才能ではなく、払えるお金という、本人にはどうにもしにくい軸で。
それでも、私はこの問題から目を背けたくない
ここまで読んで、「で、お前は月50万払える側だろう」と思われたかもしれません。その通りです。
だからこそ、見えている景色があります。
月50万円を払って最前線でAIを使っているからこそ、「これは、誰もが同じように払える金額ではない」ということが、痛いほどわかる。自分が恵まれた側にいることに、自覚的でいたいのです。
AIで開発を支援することを生業にしている立場として、私が考えていきたいのは、二つです。
ひとつは、より少ないコストで、より大きな成果を出す方法を磨き、それを発信していくこと。「月50万かけないと無理」ではなく、「ここを押さえれば、もっと少ない投資でここまでできる」を示すこと。
もうひとつは、会社や個人が、過大な負担なくAIの恩恵を受けられる仕組みを考えること。1アカウントをどう活かすか、どこに投資を集中すべきか。当事者として試行錯誤した結果を、できる限りオープンにしていきたい。
IIWAYO.TECHでは、AIは「使い放題」です
そして、これはひとつの実践でもあります。私の会社 IIWAYO.TECH では、メンバーが使うAIツールはすべて会社負担で使い放題にしています。Claude CodeもLovableも、各社の最上位プランも、「原資が足りないから使えない」という壁を、会社の側で取り払っているということです。
「AIを本気で使いこなしたい。でも、個人で月数万〜数十万円は正直きつい」——もしあなたがそう感じているなら、その壁を気にせずAIを浴びるように使える環境は、それだけで大きな価値があるはずです。
AIで本気で伸びたい人と、一緒に働きたい。心からそう思っています。
格差が広がっていくのを、ただ眺めているつもりはありません。
最後に、あなたに問いかけたいと思います。
あなたは、この「AI課金格差」を、どう感じますか。
「自分には関係ない」と思った方こそ、一度立ち止まって考えてみてください。AIを使えるかどうかが収入を左右する時代は、もうすぐそこまで来ています。そのとき、入口に立つための原資を、あなたは、あなたの会社の仲間は、用意できるでしょうか。
その問いと向き合うことが、これからの数年を分ける——私はそう考えています。
この記事のポイント
- AIの本当の格差は「使えるかどうか」ではなく、その手前の「課金できるかどうか」で生まれ始めている
- 筆者は現在、AIに毎月約50万円を課金。Claude CodeのMaxは月200ドル(為替で約3万2,000円)で、しかも3契約。各社の最上位プランも軒並み月200ドル、そこに従量課金とLovable等が積み重なる
- 無料版はレート制限・回数制限ですぐ止まり、本格利用には最低でも月4万円規模が必要。Claude Codeは「使うほど生産性が上がる」ため、結局最上位プランしか選択肢がなくなる
- ただし日本に住んでいれば、月5万円程度はアルバイト40時間ほどで稼げる。原資をつくれる環境にいること自体が、世界的には恵まれている
- 国内では、会社の1アカウントは用意できても、社員が独立・成長しようとすると個人で月4〜10万円を払えるかが壁になる
- 世界では、オフショア開発がAIに代替されて消える一方、その担い手は課金原資が最も足りないという二重の不利に直面する
- 格差を生むのは努力でも才能でもなく「原資」。IIWAYO.TECHではAIを会社負担で使い放題にし、この壁を取り払っている
伊藤翔太 株式会社IIWAYO.TECH 代表取締役 / 株式会社リサスティー 代表取締役